
小さな判子を、ひとつ、またひとつ。
くるり窯うつわ展|福井一伯
9/1–9/15, 2026

9/1(火)より、TOKYO FANTASTIC 201にて「くるり窯うつわ展」が始まりました。

店内いっぱい、ずらりと並んだ約300点。窓辺にはマグカップ、中央のテーブルには丸皿やオーバル皿、八角皿、豆皿。飯碗、どんぶり、鉢、湯呑、ぐい呑み、大小さまざまな花器まで、見渡す先に、くるり窯・福井一伯さんのうつわが広がっています。
生成りのようなやわらかな地に、にじむ青や緑、あたたかな茶。小さな花、点々と続く模様、ぐるりと連なる輪、細い線を重ねた格子。同じ色合いの中に並んでいても、近づいて一客ずつ眺めてみると、形も、模様も、釉薬の流れも、焼き上がりも本当にさまざまです。
約300点が並ぶからこそ、
見えてくる違い

これだけたくさんの作品を一度に並べてみると、「くるり窯さんらしい色合い」というひとつの印象の中にも、いくつもの景色があることに気づきます。青がふわりと広がるもの、緑を帯びた釉薬が縁に溜まるもの、あたたかな茶が輪郭を引き締めるもの。細かな印花が器いっぱいに続く一客もあれば、生成りの地を広く残した静かな一客もあります。
マグを一列に並べてみても、青の位置や釉薬の流れ、小さな印の間隔まで少しずつ違います。丸皿やオーバル、八角のうつわも、数枚を隣り合わせることで、縁の表情や模様の密度、一客ずつの焼き上がりがよりはっきりと見えてきます。
ひとつを近くで眺め、少し離れて同じ器種を何客も見比べてみる。約300点が揃った今回だからこそ、そんなふうに視線を行き来しながら、お好みの一客を探していただける個展になっています。
小さな判子を押す、その前に。
土の「ちょうどいい頃合い」を待つ

初日の9/1には、静岡・浜松から福井一伯さんが在廊くださいました。オープン直前には、約300点のうつわに囲まれながらインスタライブを。作品を実際に手に取っていただき、印花の工程や使っている道具、釉薬のこと、今回初めて届いた形まで、たっぷりとお話を伺っています。

なかでも印象に残ったのが、小さな判子を「押す」よりも前にある時間でした。くるり窯さんの印花は、成形して白い化粧土をかけたら、すぐに判子を押せるわけではありません。一度発泡スチロールの中へしまい、乾きすぎず、やわらかすぎない、判子がきれいに入る硬さになるまで待ちます。
やわらかすぎれば、器の形が動いてしまう。乾きすぎれば、模様がきれいに入らない。土の状態を確かめながら、その「押せる頃合い」を見計らうことも、印花の大切な仕事なのだそうです。
完成したうつわに残る、小さな花や輪、点、線。そのひとつひとつの奥には、手を動かす時間だけでなく、土の変化を待つ時間まで重なっています。
木を削ってつくる、
小さな判子

福井さんが印花に使う木の判子は、ご自身で木を削って用意されたもの。小さな花のような模様や、ひとつずつ連ねることで縁をめぐる文様になっていくものなど、道具をつくるところから始まり、その小さな判子を今度は器の上へ、ひとつ、またひとつと押していきます。
判子によってできた窪みには、青く発色する呉須を。さらにその上から釉薬を重ね、窯の中へ。焼き上がると、青が窪みの中へ深く残ったり、釉薬と溶け合うようにふわりとにじんだりします。
同じ判子を使っていても、押された位置や重なり方、呉須の入り方、釉薬の流れによって、一客ずつ違う表情に。店頭で同じ模様を何客か並べてみると、花の輪郭がしっかり残ったもの、淡い青が少し外へ広がったもの、模様と模様のあいだに生成りの余白がゆったり残るものなど、その違いもよく分かります。
同じ印から生まれていても、出来上がる景色は同じではありません。
押す、ずらす、引く。
模様を生み出す、さまざまな道具

そして、くるり窯さんの模様を生み出すのは、木の判子だけではありません。鉄のパイプを少しずつずらしながら押して、ぐるりと続く輪に。櫛を使いやすいように工夫し、表面を引っ掻くようにつける「櫛目」。フォークを立てて、点々とリズムよく模様を重ねたうつわもあります。
ひとつの道具をただそのまま使うのではなく、「こう動かしたら、どんな模様になるだろう」と試しながら生まれていく装飾。押す、ずらす、引く、重ねる。完成した一枚ではひとつの模様に見えていたものも、近くで眺めてみると、その中に福井さんのさまざまな手の動きが見えてきます。
青、緑、茶。
釉薬と火がつくる色の景色

約300点を見渡していると、模様と同じくらい気になってくるのが、色の違いです。初日のインスタライブでは、藁の灰を含んだ釉薬から生まれるやわらかな青、木の灰を使った釉薬から現れる緑や深緑、そして「鬼板」と呼ばれる鉄分の多い顔料から生まれる、あたたかな茶の表情についてもお話しくださいました。
白い化粧土の上で、青、緑、茶がにじみ、ところどころに土の粒や焼き色がのぞきます。同じ青でも、印花の窪みに細く残るものもあれば、釉薬と溶け合い、境界がふわりとほどけるものも。縁から下へ色が流れ、青の濃淡が縦に続いているマグもあります。
福井さんが、窯を開ける瞬間は「毎回ドキドキ」とお話しされていたのも印象的でした。人の手で模様をつけ、色を重ねたその先に、窯の中で起きる変化が加わる。そこまで重なって、ようやく一客の景色ができあがります。
まるで、お洋服の生地のような
八角皿と八角豆皿

今回の展示の中でも、ついつい何枚も見比べたくなるのが、八角皿と八角豆皿。細い線を何本も重ねた格子模様、小さな点が連なる模様、ぽん、ぽんと散りばめられた花のような印花。生成りのような地に、淡いブルーやグレー、少し茶を含んだ線が重なり、何枚も並べてみると、まるで異なる柄の布を広げているようです。

同じ「八角皿」でも、細かなチェック、大きめの格子、小さな花、ドットなど、模様の組み合わせはさまざま。青がしっかりと残った一枚、生成りの余白が広い一枚、線が細かく重なったもの、花がぽつぽつと散るもの。格子の幅や線の濃さ、印花の位置、青の残り方まで見比べていくと、一枚ずつ、まるで異なる柄の生地をまとっているように見えてきます。
大きな八角皿と、手のひらに収まるような八角豆皿。同じ模様で揃えても素敵ですし、あえて異なる柄を組み合わせるのも楽しそうです。その日の料理や気分に合わせて、お洋服を選ぶように、うつわの柄を選んでみる。
料理を盛ったあとも、八角形の縁から格子や小さな印がのぞきます。食べ進めると、隠れていた模様が少しずつ戻ってくるところまで、食卓で使う楽しみにつながっています。
窓辺いっぱい。
形も模様も違うマグカップ

今回、マグカップも本当にたっぷりと届きました。窓辺には、見渡す先までずらり。
これまでの筒形に加えて、少し背を低くしたもの、ころんと丸みをもたせたもの。そして今回は、高台をぐっと高くした筒形のマグも初登場しています。高台の部分にも印花が施されていて、正面だけでなく、横から眺めたときにも小さな模様が見える一客です。

マグを選ぶときは、色や模様だけでなく、ぜひ実際に手に取ってみてください。全体の高さ、胴の丸み、口元の広がり、高台の高さ、持ち手のかたち。同じくらいの大きさに見えていても、手にすると印象が少しずつ変わります。
朝のコーヒーをたっぷり飲みたいのか、少し小ぶりなマグを気軽に毎日使いたいのか。同じ形の中で青や緑、茶を見比べてもいいですし、まずは手に馴染む形を探して、そこから模様を選んでみるのも。
これだけのマグが並んでいるからこそ、「この形が好き」「この青がいい」「この模様の入り方が気になる」と、ご自身の好みをひとつずつ確かめながら選んでいただけます。
古いものに感じる時間と、
これから使っていくうつわ

福井一伯さんは、古布や古陶磁など、時間を経た古いものを好み、「時の流れを感じさせるあたたかみのある器」を考えながら制作されています。
TOKYO FANTASTICでは、これまで長く、くるり窯さんの作品をご紹介してきました。粉引のやわらかな表情、穏やかに刻まれたしのぎの線、印花、呉須、三島手、象嵌、灰釉。その時々で新しい仕事に出会いながらも、作品を並べると、どこか変わらず感じるものがあります。
新しく窯から出たうつわなのに、古い木の棚や家具の中へ置くと、不思議とすっと馴染むこと。生成りの地、にじんだ色、土の粒、焼き色、細かな印、少しずつ揺らぐ輪郭。真新しさだけが前に出るのではなく、以前からそこにあったもののように見える瞬間があります。
けれど、くるり窯さんのうつわは、古いもののように眺めて終わるためのものではありません。マグカップ、皿、碗、鉢、湯呑、花器。日々の暮らしのすぐ近くで、手に取り、料理を盛り、飲み物を注ぎ、花を生けるうつわです。
古いものに感じる時間を見つめながら生まれた器が、今度は新しい使い手のもとへ。その食卓や食器棚の中で、これからの時間を重ねていく。そんなところまで思い浮かべながら店内を見渡すと、約300点の景色もまた少し違って見えてきます。
インスタライブで聞く
くるり窯・福井一伯さんのうつわのこと
初日のオープン直前、約300点の作品を前に、福井一伯さんとインスタライブを行いました。
印花を押す前に土の状態を待つこと。ご自身で用意された木の判子や、パイプ、櫛、フォークなどの道具。呉須や釉薬のこと。そして窯を開けるまで分からない焼き上がりや、今回初めて届いたマグの形まで。作品を実際に手に取っていただきながら、一客の表面に見えている模様が、どんな手の動きと工程から生まれているのかをお話しいただいています。
店頭で気になった模様が、どのようにつくられているのか。同じように見えた二客が、どうして少しずつ違っているのか。インスタライブで聞いた福井さんのお話と、実際に並ぶうつわを行き来しながら見ていただくと、印花のひとつひとつや釉薬の景色も、また違って見えてくるかもしれません。
約300点の中から、
「これが好き」と思う一客を

丸い皿と八角の皿。浅い鉢と深い碗。すっと背の高いマグと、ころんと丸いマグ。青がしっかり残るものと、生成りの余白が大きく残るもの。今回の店内には、たくさんの選択肢があります。
たくさんあるからこそ、どれにしよう、と迷う時間も。けれど、数枚を並べたり、何客かを手に取ったりしているうちに、「この格子が好き」「この青のにじみがいい」「この持ち手がしっくりくる」と、ご自身が惹かれる理由も少しずつ見えてきます。
朝のコーヒーを飲むマグ、いつものご飯をよそう飯碗、料理を盛るオーバル皿、食卓へひとつ加えたい豆皿、季節の草花を生ける花器。どれを選ぶかだけではなく、その一客をご自身の食卓や食器棚に迎えたあと、どんなふうに使っていこうかと想像する時間まで。
約300点の中から、これから一緒に時間を重ねていく一客を、ゆっくりとお選びいただけましたら嬉しいです。
くるり窯うつわ展
9/15(火)まで開催しています

くるり窯うつわ展
QuruliGama Ceramics Collection
2026年9月1日(火)-9月15日(火)
※毎週水曜日は定休日です。
くるり窯
福井一伯
TOKYO FANTASTIC 201
東京都港区南青山3-16-6-201
営業時間 12:00-19:00
tel. 070-2315-3006
水曜日定休
実際に手に取り、形や模様、青や緑、茶の色合い、釉薬の流れまで見比べながら、ご自身の暮らしに迎えたい一客をお選びいただけましたら嬉しいです。
会期中、TOKYO FANTASTICオンラインストアでも作品をご紹介予定です。最新の掲載状況や作品についてのお知らせは、TOKYO FANTASTIC 201のInstagramでもご案内しています。
TOKYO FANTASTIC オンラインストアはこちら
https://tokyofantastic.stores.jp/
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